2004年 林加奈子(フィリピン・ヌエバビスカヤ州およびマリンドゥケ州に派遣)

ジーエルエム・インスティチュート2004年長期実務研修プログラムとして、フィリピンの現地NGOであるフィリピン農村再建運動(Philippine Rural Reconstruction Movement:PRRM)にフィールド・リサーチ・アシスタント(FRA)を1年間派遣しました。このプログラムは、開発援助分野で働くことを目指す若手人材に、現場での長期研修機会を提供し、キャリア開発を支援することを目的にしています。
今回派遣された林加奈子さんは、1979年生まれです。東京都立大学法学部から、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に進み、インドの農村開発、参加型開発、女性と開発をテーマに研究してきました。大学院在学中から「地球の友と歩む会」などのNPOでボランティア活動を行い、本人のキャリア設計によると、13年後に農村開発・女性の開発の専門家兼研究者として世界の人々の幸せに貢献するための第一歩として長期実務研修プログラムに応募してくれました。
2004年3月11日に行われたオリエンテーション兼面接で、本研修プログラムの目的と内容(TOR)、PRRM、フィリピンと日本のODA政策、異文化で生活するための心得、渡航と滞在に関することなどが、辻理事から詳細に説明を受け、4月3日にフィリピンに向けて出発しました。
マニラでPRRMのブリーフィングを受けたあと、ヌエバビスカヤへ。ここでは、「焼畑及び違法伐採を住民参加型により規制する」ことを目的とした国際協力銀行の提案型調査にフィールド・リサーチ・アシスタントとして参加しました。
主に、①現地コミュニティの組織化を担当する職員の観察記録の取り纏め(毎月)、②住民が作成した土地利用計画のデジタル化、③社会資本(ソーシャル・キャピタル)調査結果の取り纏め、④コンセプト・ペーパーの作成、⑤ワークショップ・ファシリテーションの補助などを担当し、5ヶ月間滞在しました。
提案型調査の終了と共に、林さんはPRRMのマリンデュケ支部に異動し、「海洋資源保護プロジェクト」に加わりました。マリンデュケでは、①計画・モニタリング・評価を担当するスタッフのアシスタント、②漁業サミットの準備、③ワークショップや会議への出席、④ケーススタディの作成等の業務を中心に行いました。ただ、マリンデュケでは、実務研修の目的がPRRM側に十分理解されておらず、TORとの乖離が大きかった問題が報告されています。
林さんは、1年間の派遣目標として、①フィリピンの社会・経済・政治システムを理解すること、②参加型開発の実用的な技術を習得すること、③プレゼンテーションやアドミンなど実務的な知識を得ること、および④英語力を高めること、の4つを掲げていました。その内、①と④の達成度は高く、②と③はその機会が与えられたヌエバビスカヤでは習得できたが、マリンデュケではなかなか難しかったと報告されています。今後は、FRAの派遣目的とTORをPRRMの支部に十分説明し、派遣機会が最大限に活用されるよう努める必要があります。
林さんは、7月から、インドコルカタ州の日本総領事館に、現地NGOや地方自治体に供与される草の根無償資金協力の担当官として派遣されることが決まっています。開発援助の専門家としての一歩を踏み出した林さんを、心から応援したいと思います。(西野 桂子/代表理事)