2012年 林友花里(フィリピン・ヌエバビスカヤ州に派遣)

ジーエルエム・インスティチュート(GLMi)は、2012年9月からフィリピン・ヌエバ・ビスカヤ州にて、日本国際協力財団(JICF)、フィリピンのマイクロファイナンス機関(NOVOLED)と共同で農機レンタルプロジェクト(ARMLED)を実施しています。2013年8月をもち林友花里フィールド・マネージャーは任期満了となり、出産準備のため帰国しました。本頁では、林より1年間の経験を報告します。

フィールド・マネージャーに就任

「ソーシャル・ビジネスは貧困削減に繋がるのか?」これは大学院在学中から、私が抱いていた一つの疑問でした。卒業後、縁あって、GLMiの長期実務研修プログラムを通してソーシャル・ビジネス立ち上げに携われることになり、この答えを見つけるため、2012年9月、意気揚々とプロジェクトサイトへ向かいました。

“ソーシャル・ビジネス”の難しさ

私達が目指したソーシャル・ビジネスは、農村地域に住む小規模農民に対して、農機具を低価格で貸し出したり、種・堆肥などの農業資材購入費にあてるための低利ローンを提供することで、農業における効率および収穫を上げることを目的としたものです。現地に来る前から、ソーシャル・ビジネスに関する書籍は、いくつか読んでいましたが、実際に立ち上げ、運営することは、当初、私が想像していた以上に大変なプロセスでした。

 

特に難しかったことは、「サービスを低価格に抑えることで零細農民の金銭的な負担を軽減する」というソーシャルな視点と、「この事業を継続していくために一定の収益を上げる必要がある」というビジネスとしての視点との間でバランスを保つことでした。このどちらが欠けても本事業の目的を達成したことにはなりません。よって、ビジネスを開始するにあたり、農機のレンタル価格を決定するまでには、調査期間も含め数ヶ月を要しました。また、レンタルサービスを開始した後も、運営時のフローが煩雑であったり、予定よりも運用費がかかったりなどで、オペレーションの改善に試行錯誤する日々が続きました。

ソーシャル・ビジネスと貧困削減

それが今では、ビジネスフローが確立し、スタッフ1人1人がスムーズに動けるようになっただけでなく、周辺地域において徐々にARMLEDの知名度が広がり、レンタル予約数も着実に増えています。6月からは収穫期を迎え、(レンタル料の徴収は収穫期一括支払いのシステムを採用しているため)ビジネス収益も上がるようになりました。ARMLEDのサービスを利用した顧客からは、「低価格で農機がレンタルでき、低利ローンを組めるようなったことで、高利貸しからお金を借りなくても良くなった」、「ARMLEDのサービスが村に入ってきたことで、個人的に農機を貸し出している富農たちもレンタル料を下げるようになった」との声が上がっています。

 

これらの成果から、私は、本事業のような“ソーシャル・ビジネス”が、開発問題を解決する為の1つのアプローチになり得る可能性を多いに感じました。またARMLEDの場合、取引価格があまり変動しない稲作に限定してビジネスを始めたこと、農機レンタルが現地に前例の無いビジネスであったこと、また、フィリピン全土が今まさに、従来の手作業による農法から、機械による農法へとシフトしている時期であり、このタイミングにビジネスを開始できたことで商機を掴むことができたように思います。今後も改善を重ねることで、より多くの人に裨益するサービスになると確信しています。

長期実務研修から学んだこと

私自身もこの1年、本事業に従事したことで、開発分野で働く為に必要なマネージメント能力、交渉能力、実務スキルなどを実践の中から学び、多少なりとも習得できたと感じています。今回、この様な大変貴重な機会を与えて下さったGLMi関係者の皆様には、深く感謝しています。帰国後は、プロジェクトの報告会などを通してARMLEDの広報活動をしていきたいと考えています。どうぞ皆様、これからもARMLEDへの温かいご声援を宜しくお願い致します。
(林友花里/ARMLEDフィールド・マネージャー)
<Paitanにて村議会メンバー&農民とミーティングしているところ(左手前が林)>