有機・減農薬農産物のアグリビジネス(SILFORプロジェクト)3年次完了のご報告

2015/10/30

ジーエルエム・インスティチュート(GLMi)が2013年3月から開始した、フィリピンにおける「ヌエバ・ビスカヤ州における有機・減農薬農産物の生産を通じた貧困農民の生計向上支援プロジェクト(以下SILFOR)」が、2015年3月をもって終了しました。3年次においては、Vizcaya FRESH!の販売経路を拡大し、農民のリーダー育成へ取り組むとともに、地方自治体や政府との連携を一層深めました。今後は、現地人スタッフによる運営へと移行し、GLMiはそのサポートを行っていく予定です。3年次の様子についてお伝えします

販売経路の拡大

3年次のSILFORでは、販売経路を2年次よりも拡大することが目標のひとつでした。今年は、今まで販売してきたマニラのレガスピマーケットと、ビスカヤ州ソラノ町の直営店に加えて、市役所での直売などを行ってきたイザベラ州サンチアゴ市にVFIの直営店をオープンさせました。両直営店においては週5~6日販売を行い、目標であった週2回以上を大きく上回りました。マニラのレガスピマーケットでも、常連客が増えていくなど売り上げは上々です。ビスカヤにおいてはVFIのTVCMの放送も行い、ルソン島の有機農業通の間ではすっかり有名になりました。

Vizcaya FRESH!店舗内に並ぶ有機野菜

農民の育成と有機認証制度

販売経路の拡大が出来た背景は、生産量の増加があります。事業対象地域の拡大によってSILFOR裨益者の数が増加したことにより、販売可能な野菜が必然的に増えました。事業対象地域は、目標であった4町8村100名を大きく超えた4町11村149名となりました。農民や現地生産者組織スタッフ達の仕事の質や技術の向上も理由のひとつです。有機農業技術に関する研修には149名が参加し、そのうち59名は有機認証を取得し、地域におけるリーダー的な存在となりました。また、対象農家は選別や梱包などの研修を受け、農産物の効率的出荷を図りました。栽培計画や買い付け方法などについてのビジネス計画や運用マニュアルについても整備しました。その結果、3年次における月間出荷量は3,683kgと、2年次の916kgの約4倍まで上昇しました。

現地農家の様子

現地政府機関と連携もさらに強化しました。人材育成に関すると、2014年4月から5月には、農業省農業府と農業研究所の協力を得て、参加型有機認証制度の内部統括システムおよびフィリピンの有機・減農薬農法に関するガイドラインについての研修を複数回実施しました。

さらに、プロジェクト終了後を見据えて、マーケティングやビジネスのできる人材の育成や、現地行政とのネットワークを構築することによって、ソーシャルビジネスの基盤を一層強化しました。その結果、現地行政機関と良好な関係構築に成功し、有機農業関係のほとんどのイベントに招かれ参加することができました。

ファーマーズカンファレンス

プロジェクト終了直前に行われたファーマーズカンファレンスは、上記のような政府の協力姿勢や農民の積極的参加の様子が表れていました。
農民約200名が各村から集まり、ヌエバ・ビスカヤ州知事や政府パートナー、日本からはGLMiの代表や事務局スタッフ・インターンも出席しました。SILFORの経過報告のみならず、農民たちは、有機栽培農村の将来のビジョンについてワークショップ形式で話し合う機会を得ました。西野代表は「今まで食べたキュウリの中で一番おいしい!」と率直な思いを述べ、農民たちも励まされた様子でした。

ファーマーズカンファレンスにて農民による発表の様子

 

在フィリピン大使館での報告会

ファーマーズカンファレンスの数日後には、在フィリピン日本国大使館において事業担当書記官出席の下、プロジェクト完了報告会を行いました。日本人関係者のみならず、農民や現地スタッフ、ヌエバ・ビスカヤ州行政機関職員が出席し、現地関係者から有機野菜の紹介と日本の歌(長渕剛「乾杯」)の披露が行われました。
現地関係者にとっては貴重な機会となったようです。また、大使館職員とフィリピンの農民が直接顔を合わせる機会を持てたことも有意義であったと思います。今後もこのように構築されたネットワークや対話によって得たものを活かしていければと考えています。

今後の展望

2015年3月の終了後、プロジェクトでの活動は現地の人々の手に引き継がれVFIが運営しています。GLMiは、独り立ちをしたVFIの活動を引き続きフォローし、知識・技術等に関する必要な支援を行っています。

相馬プロジェクト・マネージャーから

ヌエバ・ビスカヤとの縁は、2005年に遡ります。当時GLMiの森林組合向け生産向上事業に関わったことがきっかけとなり、その後2008年からSILFORの前身である「ヌエバ・ビスカヤ州重要水源地における住民参加型森林管理プロジェクト(PPFM)」の初代プロジェクト・マネージャーを務めました。PPFMで環境に優しい農業は普及できたものの、それがどうやって農民の収入向上につながっていくのか、自分の中にも、プロジェクト関係者の中にも疑問が残っていました。

2011年に始まったSILFORは、「技術的な農法の普及」を「収入の向上」に繋げるべく立案されたプロジェクト。貧困農民を対象に有機農産物のマーケティング支援を行うという非常にチャレンジングな内容でした。SILFORの根幹をなすコンセプトは、「ビジネスという観点で農業を捉え直すこと」にほかならず、これには農民も、スタッフも、そして私自身もかなり大がかりな発想の転換が必要でした。プロマネを務めた2年間は、言葉では言い尽くせないほど色々なことがありました。でも、なんとかSILFORから「Vizcaya Fresh!」という有機農産物のマーケティング組織を生み出し、ソーシャルビジネスとして独り立ちさせるところまでは支援することができました。

振返ってみれば、日本からの支援で実施するプロジェクト期間は、現地の人にとっては助走期間のようなものであり、日本人スタッフは助走期間の伴走者のようなものだったと思います。日本人が去った後、日本の支援が引いた後に、本当の彼等の闘いが始まり、彼等の力が試されるのだと思います。とはいえまだヨチヨチ歩きを始めたばかりのVizcaya Fresh!。何がどうなるか分かりませんが、今後も、VFIの理事として彼等の挑戦を見守っていく所存です。皆さまも、歩き始めたばかりのVizcaya Fresh!の奮闘を、温かく見守っていただけたらと思います。

写真左端 相馬PM

 

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