2007年YOUPLIDのご報告

2007/12/11

ジーエルエム・インスティチュート(GLMi)の開発援助のための人材養成事業の一環として、2004年度に開始して以来、YOUPLIDチームの活動も今年で4年目を迎えました。その近況について御報告します。(杉原たみ/GLMi会員)
まずは2004年と昨年に引き続き、今年も東京学芸大学附属世田谷中学校(世田谷中)の総合学習の時間にYOUPLIDの実践授業を行いました。トップバッターとして、1回目の授業をYOUPLIDチームメンバーの鈴木教諭とともに担当することになり、「生徒たちに関心を持ってもらうことができるだろうか」と、不安な思いで一杯になりながら授業にのぞみました。「近ごろの若者は…」と、つい批判めいた言葉を口にしてしまいがちな今日このごろ。ふだんほとんど接する機会のない中学生を相手に、ちゃんと授業を進めることができるのか、緊張が高まります。
 

 
授業当日、今年度のテーマ研究としてYOUPLIDを選択した中学2年生と3年生の男子、女子生徒たちが次々と教室にやってきました。今年は男子8名、女子8名の合計16名。予想どおり、学年・性別ごとのグループになって着席。全員が初顔合わせとなるため、ぎこちない様子です。こちらの緊張が伝わらないように、努めて明るくふるまうよう心がけながら、1回目の授業を開始しました。
 
まずはこれから一緒に学んでいくメンバーの自己紹介と、緊張をほぐすためのアクティビティとしての、キャッチボールによるニックネーム・リレー。参加者全員が輪を作って、キャッチボールをするのですが、ボールを持った人は「パスタが好きな○○(ニックネーム)です」という具合に、自分の好きな食べ物とニックネームをみんなの前で言わなければなりません。YOUPLIDでは互いにニックネームで呼び合うのがルールです。これは生徒たちだけでなく、授業の進行役(ファシリテーター)をつとめる大人(先生など)についても同じこと。今後の活動に向けた導入として重要なアクティビティです。
 
最初はファシリテーターの私(たみみ)がお手本を示します。「タイ料理が好きなたみみです」→「すしが好きな○○です」→「□□が好きなおとーさん(鈴木教諭のニックネーム)です」・・・。あまり気乗りはしないけれど、仕方なくこちらに付き合ってやってくれているといった感じですが、とりあえず全員が自己紹介を完了。あまり変わったニックネームの生徒はおらず、特に男子は名字で呼び合うケースが多いらしいということがわかりました。
 
続いて簡単なファシリテーターの自己紹介やコースの内容についての説明を挟みながら、各自の関心事を書き出す「自分発見」や、付せんを使い、模造紙に描いた木の枝に、YOUPLIDに対するそれぞれの期待を葉に見立てて貼り出す「期待の木」、地球上の様々な課題や問題を取り上げたクイズ「グローバル・クイズ・ラインナップ」といった様々なアクティビティを行います。
 

 
気がつけば、あっという間に90分の授業時間が終わっていました。授業開始時よりは、なごやかな雰囲気の中で無事終了することができたようです。「難しい年ごろなのでは・・・?」といった当初の懸念も、全員が思いのほか協力的で、かえって拍子抜けするくらいでした。昨年度の生徒たちと比べ、全体的におとなしい印象を受けましたが、「世界のことが少しわかった」、「『国際協力』をすごくやってみたくなった。次のYOUPLIDが楽しみ」、「自分の意見とほかの人の意見を比べることができて良かった」など、参加した生徒たちの感想も肯定的で、今後のYOUPLIDの授業に関心を持ってもらえたようです。
 
ところでこのYOUPLIDですが、中高生を対象としたこのプログラムの正式名は、「You are the Planner for International Development(今日からきみも国際協力プランナー)」で、タイトルには、参加する生徒たちが、国際協力を実生活と結びついたより身近なものとして理解し、地球上に存在する様々な課題の解決に向けた協力のあり方を考え、また実践する能力をはぐくんでいくことへの期待がこめられています。
 
YOUPLIDは年間を通じた開発教育プログラムとして、多様な文化・価値観を受け入れられる寛容性、総合的なコミュニケーション能力、他者への思いやり、自ら進んで行動を起こす態度、リーダーシップ、論理的に計画を立てる能力を身につけることを目指して開発されています。といっても堅苦しい授業ではなく、上記のようなアクティビティを通じて生徒たち1人ひとりが主体的に参加し、楽しみながら、考え、学習していくことを目的としています。ワークショップやゲームを通じて、児童労働や貧困、ジェンダーなどの問題について学んだり、外部からの講師の話を聞くことで途上国や国際協力についての知識を深めたりするほか、後半では各自が選択した課題(テーマ)についてさらに掘り下げ、問題解決に向けた「自分たちの」国際協力プロジェクトの計画・立案を実際に行います。
 

 
今年の授業は、悪天候による突然の休講で、予定していた10回の授業が9回になるといったハプニングにも見舞われましたが、11月に無事全日程を終了しました。16名の生徒たちも4つのグループに分かれ、それぞれに意見やアイディアを出し合いながら、自分たちのプロジェクトの計画表を完成させ、校内で展示発表しました。
 
YOUPLIDチームは、こうした世田谷中での実践授業に加え、プログラムをより汎用性の高いものにするための取り組みも積極的に行っています。当初からの目的であった、日本全国各地の中学校・高等学校の「総合的な学習の時間」でのYOUPLIDの実践に向けたマニュアル作りや、通年プログラムに限らず教科の授業内でも活用できるようなプログラムのモジュール化、実際の教育現場での実践者となる教員を主な対象とした研修(TOT:Training of Trainer)、さらには開発教育に携わる組織や団体、個人が参加する研究集会での発表を通じた情報発信やネットワーク作りなど、様々な角度からYOUPLIDの普及にかかる課題に取り組んでいます。
 
2007年の成果としては、先に述べた世田谷中での授業のほか、実践を通じて明らかとなった課題・教訓等をふまえた簡易マニュアルを整備しました。今年の世田谷中での授業を終え、新たに手直しが必要な部分も出てきましたが、完成に向け、あともう一歩のところまで来ています。
 
TOTに関しても、今年は関西学院大学の国際教育・協力センター(CIEC)からの依頼により、YOUPLIDチームメンバー2名(古谷・鈴木)が、系列4校 の現職教員や学生など関係者12名を対象に、7月28日~29日の2日間の日程で、「YOUPLIDファシリテーター養成研修」を実施しました。CIECが目指す、中高大の10年一貫教育を通じたグローバルに活躍する人材の育成という目標に向け、各系列校が将来的に開発教育を導入するための準備として行ったものです。
 
また8月4日に行われた第25回開発教育全国研究集会では、自主ラウンドテーブルを開設し、YOUPLIDをよりよいカリキュラムへと改善するための方策について、シミュレーション・ゲームを交えつつ、参加者との意見交換を行いました。これらの取り組みを通じ、YOUPLIDの実践の場が全国各地へと広がっていくことを期待しています。
 
現在来年に向け、新たな取り組みも検討中。今後もチーム一丸となって前進していきたいと考えています。YOUPLIDを通じて生徒や教員、その他開発教育に関心を持つ様々な人たちとの交流も生まれ、それがモチベーションにもつながっています。最後に、世田谷中での授業を終えた私の感想。「近ごろの若者、なかなかやるじゃない。」


 

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