みんなのキャリアパス第1回 青山学院大学経済学部教授:藤村学さん

2012/11/01

「みんなのキャリアパス」とは、大学、NGO/NPO、開発コンサルティング企業、国際機関などで活躍されている国際協力の「プロ」に、GLMインスティチュートのインターンやボランティアら、これから国際協力の一歩を踏み出す「卵」が中心となってキャリアや国際協力への想いをインタビューする新企画です。国際協力分野に興味がある人、将来国際協力分野で働きたいけど、まず何をしたらいいかわからない人とって必見の内容となっています。
インタビューした「プロ」たちは、皆熱い想いに溢れる魅力的な方たちでした。このインタビューが少しでも皆さんの夢を実現していく上で、お役に立てればと思います。今後3月までを目処に定期的に記事を更新していきますので、是非ご覧ください!
GLMi事務局より:

本企画はインターン、ボランティアを中心に立ち上がったみんなのキャリアパス実行チーム、略して「みんパスチーム」による 参加型企画です。彼らの自主性を尊重し、インタビュー対象者の選定やインタビューのまとめ方も「みんパスチーム」メンバーがそれぞれ行い、回ごとにまとめ 方が異なる場合もありますがご了承ください。また、インタビュー対象者も実名掲載の方、匿名希望の方などいらっしゃいますがこちらもご了承頂けましたら幸いです。

本企画は2011年3月までを予定しておりますが、好評であればその後も継続できたらと考えております。「みんパスチーム」に参加したい方はぜひ事務局までお問い合わせください!

藤村 学

青山学院大学 経済学部 現代経済デザイン学科

研究テーマ

開発政策・プロジェクト評価の理論と応用
越境インフラ開発の経済効果

学歴

早稲田大学 政治経済学部政治学科
ハワイ大学大学院 経済学研究科 修士
ハワイ大学大学院 経済学研究科 博士

職歴

JETRO(日本貿易振興機構) 海外調査部アジア大洋州課
JETRO北九州事務所
静岡県立国際関係学部 助手
ADB(アジア開発銀行) 調査研究局プロジェクト経済評価課エコノミスト
ADB 大洋州局エコノミスト
ADB 南アジア局エコノミスト

「現在青山学院大学にて経済学部の教授をされていらっしゃる藤村氏のキャリアパスは、非常に多岐にわたっています。もともとは早稲田大学にて政治学を専攻され、その後JETROに入構。海外調査部・北九州事務所で数年間勤務された後、ハワイ大学大学院の経済学研究科に留学。ハワイ大学にて修士号と博士号を取得後、静岡県立大学にて助手として勤務され、その後ADBに入行。そして、ADBにてエコノミストとしてご活躍された後、現職にいたる、という形で、様々な経験をされていらっしゃるのです。

本企画の記念すべき一回目は、上記のように多岐にわたる藤村氏のキャリアパスを、Q&A形式で、皆さんにご紹介していきます。

左:今回お話を伺った藤村教授、右:GLMiインターン伊藤

左:今回お話を伺った藤村教授、右:GLMiインターン伊藤

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後JETROに就職

Q.JETROに就職したきっかけはなんですか。

A. 大学3年時にアメリカ オハイオ州に留学しアジアの優秀な学生たちに感化されこういう人達と関わる仕事をしたい、と思うようになったのが始まりでした。

とても単純に海外勤務を条件に、当時は4年生の夏から会社回りをしました。大手商社や銀行も受けましたが次々に落ち、たまたま拾ってもらったのがJETROだったんです。なるべくはやく海外に行きたい、という思いでした。

Q.JETROで担当されていた業務はどんなものでしたか。

A.幸い、最初の勤務先は海外調査部アジア大洋州課勤務で、海外の調査員から送られてくる情報やレポートを編集したり、自分でも担当国経済について調べて、JETRO発行の媒体に出すといった仕事をしていました。

東京に3年勤めて北九州事務所勤務に赴任しました。当時の男性職員の標準的な人事異動でした。

同期の新入職員は色んな人がいましたよ。国際協力に重点を置いた人、ビジネス思考な人、アカデミックな人…出身大学も様々で面白い職場だったと思いますね。今でも付き合いがあります。

JETROに5年勤め、その後ハワイ大学に留学、修士・博士取得

Q.なぜハワイ大学に行かれたのですか。

A.JETROに勤務中、本格的に開発問題に興味が湧いたんです。もっと経済の勉強をしなければ、と痛切に感じました。

ハワイ大学を選んだのは隣接する東西センターという連邦研究機関から奨学金をいただけたという金銭面が大きかったです。かなり不安を打ち消しエイヤ!でしたね(笑)

博士課程では研究者、国際機関の道に進むことを視野に入れていました。

実際、博士課程の卒業見込みのときには世界銀行やADBなど色々受けたんですが、首尾悪く、このときも縁あって静岡県立大学に拾ってもらった形でした。

静岡県立大学 国際関係学部 助手

Q.静岡県立大学では今の研究に通ずる研究をされていたんですか。

A.そうですね。ハワイ大学での博士論文の延長上で、プロジェクト評価の理論と応用について研究していました。その際、研究のためADBにインタビューにいき、(そのついでに)プロジェクト評価課の課長さんに、何かいい話があったらと、強引に履歴書を渡してきたんです。それから一年後くらいにADBから面接に来ないか、と声をかけてもらったんです。

Q.面接はどのような形でしたか。

A.国際金融機関は日本で言う上級国家公務員試験のようなヤングプロフェッショナルというプログラムがありますが、私の場合は年齢制限を超えていましたので中途採用、といってもそれが標準的な雇用形態ですが、2日間に渡って、人事部も含めて10部署ぐらいで面接を受けました。最後はプロジェクト評価課からの持ち帰り試験をいただき、後日答案を送付しました。

ADB 調査研究局プロジェクト評価課エコノミスト、大洋州局エコノミスト、南アジア局エコノミスト

Q.ADBではどのような業務をなさっていたのですか。

A. 調査研究局プロジェクト評価課の仕事は、色々なプロジェクトの融資文書のなかの経済評価部分のクオリティーコントロールです。ADBの役員会議にプロジェクトを通す際の資料の一つとして経済評価が注目されるのですが、その部分について内容が妥当かどうかの内部審査的な仕事です。

大洋州局や南アジア局はいわば地域別に分かれた「営業部門」で、そこでのエコノミストの役割は実際に融資プロジェクトを形成する手伝いをすることです。プロジェクト形成チームに加わって対象国へ出張し、コンサルタントが作成したフィージビリティ調査をベースに、もしくはフィージビリティ調査が先行しない場合は、自分でデータ収集などをしてプロジェクトの経済評価をまとめます。この時は珍しい国にも行きましたよ。バヌアツ共和国、サモア独立国、アフガニスタンなど。

Q. ADBで興味深かったことはなんですか。

A.色んな国民性をみれたことでしょうか。プロジェクトチームの中で、いろんな個性の人たちと連携して仕事をしなければならないですから。

青山学院大学 助教授→教授

Q.エコノミストとしての経験から研究者の道に進まれたのですか。

A.ADB時代にプロジェクト関係の多くの論文を書いたので、それが研究者としてのキャリアの一部と認められたのだと思います。

本来、学者のストレートな道は助手からの下積みなので私の場合よそ道をして外から入ったような形ですね。

Q.国際機関をやめて研究者になろうと思ったきっかけは何ですか

A.あまり積極的な動機でなく申し訳ないですが、官僚機構があまり性に合わないということと、それからADBはマニラにありますから、養育環境がベストではなかったことです。とくに都心の大気汚染はひどいですから。

Q.現在、研究をしていて国際協力をしているという実感はありますか。

A.残念ながら、現場にいないのでかなり薄れました。これは、研究者の宿命なんです。

今でもADBの働きには興味を持ってフォローしています。ネットワークは切らさないようにしたいと思います。

国際協力について

Q.国際協力分野において海外留学は必須ですか。

A.国際協力分野においては特定のプロジェクトにヒットするスキルと知識があればどんな職歴の人にもできると思いますが、仕事の言語が英語なので、英語で十分に仕事ができるということの客観的な証拠として英語圏の大学院学位は有利でしょう。

Q.JETRO・ADBの仕事が求める人材はどのようなものだとお考えですか。

A.JETRO

公的機関でありながら日本企業にサービスしなければいけないので真面目かつサービス精神旺盛な人です。また、海外のどこへ行っても「面白い」と思えるような好奇心が必要です。

ADB

学部卒では不可能で英語圏での高等学位、3年以上の実務経験が必要となってきます。

Q.今だから言える学生時代にやっておけば良かったことはなんですか。

A.もっと勉強。本をたくさん読んで一般教養のレベルをできるだけ高めて置けば良かった。何でも読んで、何でも興味を持って、何についても意見を言えるようになったら良いと思います。アジアの優秀な人々の中でコンプレックスを感じないようにね。最近見た本のタイトルではないですが、「空気を読むな、本を読め」に賛成です。

Q.これから国際協力分野を目指す人にメッセージをお願いします。

A.「出会いを大切に。真剣に相手とコミュニケーションすること。」ですね。

編集者(青山学院大学:千葉百合香)の感想

アカデミックな方面のキャリアパスではありましたが、国際協力を志す一人として現場のお話を
聞くことができ本当に良かったです。私も自分らしくリスクを恐れず歩みたい!と感じ、更に国際協力の思いが燃やされました。

インタビューアー(GLMiインターン:伊藤)の感想

藤村先生はとても気さくな方で、非常に楽しくインタビューをさせていただきました。先生とお話をさせていただいて感じたことは、「積極的に行動すること」の大切さです。藤村先生は、キャリアを積み重ねる度に、次の段階へステップアップするため、例えば、留学を決意されたり、研究の傍らADBと関わりを持ったりと、常に積極的に行動を起こされています。このことは、国際協力に関わらず、将来どんな仕事をする上でも非常に大切なことだと思います。私も先生を見習って、「常に自ら行動を起こす人間」になるよう努めるつもりです。

お忙しいにもかかわらず、後進のために協力くださった藤村先生!この度は、本当にありがとうございました!

◆質問などがありましたら…

 

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