みんなのキャリアパス第3回 NGO ACE事務局長:白木朋子さん

2012/11/03

「みんなのキャリアパス」とは、大学、NGO/NPO、開発コンサルティング企業、国際機関などで活躍されている国際協力の「プロ」に、GLMインスティチュートのインターンやボランティアら、これから国際協力の一歩を踏み出す「卵」が中心となってキャリアや国際協力への想いをインタビューする新企画です。国際協力分野に興味がある人、将来国際協力分野で働きたいけど、まず何をしたらいいかわからない人とって必見の内容となっています。
インタビューした「プロ」たちは、皆熱い想いに溢れる魅力的な方たちでした。このインタビューが少しでも皆さんの夢を実現していく上で、お役に立てればと思います。今後3月までを目処に定期的に記事を更新していきますので、是非ご覧ください!
GLMi事務局より:

本企画はインターン、ボランティアを中心に立ち上がったみんなのキャリアパス実行チーム、略して「みんパスチーム」による 参加型企画です。彼らの自主性を尊重し、インタビュー対象者の選定やインタビューのまとめ方も「みんパスチーム」メンバーがそれぞれ行い、回ごとにまとめ 方が異なる場合もありますがご了承ください。また、インタビュー対象者も実名掲載の方、匿名希望の方などいらっしゃいますがこちらもご了承頂けましたら幸 いです。

本企画は2011年3月までを予定しておりますが、好評であればその後も継続できたらと考えております。「みんパスチーム」に参加したい方はぜひ事務局までお問い合わせください!

第3回目となる今回はACE事務局長を務めておられる白木朋子さんに大学卒業後イギリスの大学院進学の経緯や民間企業での経験、そしてこれからの夢についてお伺いしました。児童労働の撤廃と予防に取り組む国際協力NGO ACE(Action against Child Exploitation)はインドとガーナで子どもを危険な労働から守り教育を受けられるようにする現地プロジェクト実施、日本で児童労働の問題を伝える啓発活動、政府や企業への提言活動、ネットワークやソーシャルビジネスを通じた問題解決の活動を行っています。

今回お話をお伺いしたACE事務局長白木朋子さん

白木 朋子

特定非営利活動法人ACE 事務局長/理事

学歴

明治学院大学国際学部 卒業
ロンドン大学東洋アフリカ学院国際教養 ディプロマ課程
サセックス大学文化環境開発研究所開発人類学 修士課程(インドの児童労働を研究)

職歴

2001年開発援助コンサルタント会社勤務
2005年より現職

国際協力へのきっかけ

もともと大学の頃から海外旅行が好きだった白木さん。その中でも、大学3年のゼミで行ったインドのフィールドワークで、ハンマーで殴られたような衝撃を受けた。貧しくてゴミ箱に捨てられている子ども、エイズに母子感染した赤ちゃん、そして児童労働といわれる子どもたちに出会ったからである。白木さんは子どもたちがなぜ働いているのかという疑問を持つようになった。そのフィールドワーク後から、将来的に子どもに関わる仕事がしたいと思うようになった。

学生時代の挑戦

大学4年の時、大阪のNGO団体で知り合った岩附さん(現ACE代表)からの呼びかけで、世界107カ国で行われていた「児童労働に反対するグローバルマーチ」に合わせて、ACEを立ち上げた。しかし、これは6ヶ月限定の活動で、大学院に進学することを白木さんは決めていた。院進学の理由は「もっとインドについて勉強したい」という思いがあったからである。最初の1年間は英語、開発人類学の基礎を勉強するためロンドン大学東洋アフリカ学院国際教養ディプロマ課程へ、翌年サセックス大学文化環境開発研究所開発人類学修士課程でインドの児童労働について研究した。「あまり記憶にないくらい、とにかく留学中は勉強についていくことに必死で余裕がなかった」という。
1998年、インドでのグローバルマーチにて

◆白木さんへの質問!①『大学院進学の時期を選ぶポイントは?』◆

『大学卒業後はまず働いてから院に行った方がいいという意見もあるように、働いてからの方が勉強での実りの多さという意味では自分の興味ある分野を見つけられるし、キャリアに結びつきやすくことが大きいのかなと感じています。どっちでも結果的に将来に繋がれば大学卒業後すぐに院進学でもいいと思うが、大学卒業後の当時の自分と働いた経験のある今の自分を比べると、今の方が絶対多くのことを学べると思う。ある程度自分の専門分野は何かしらイメージついた状態で大学院に行った方がいいと思いますよ。』

国際協力分野への就職

大学院卒業後は国際協力の現場で働きたいという漠然としたイメージを持ちつつも、とりあえず日本で就職活動をしてから将来のことを考えようと帰国した白木さん。何事も動きながら道を見つけていくという姿勢が見られる。そして、幾つかの企業を受けた中で、開発援助コンサルタント会社に就職することとなった。ODA業務に関わりながら、国際協力の専門家の中で経験を積んだ。そこでは、国家の重点分野、現地のニーズをどう把握して、どう計画に反映させるかといった政策的な整合性などを学んだ。NGOは自分たちの思いやその時の出会いで動いてしまったりする。コンサルタント会社で、大きいピクチャーでプロジェクトをみること、プロポーザルの書き方、PCM、ロジックといったスキルやノウハウを学んだようである。
そして、白木さんは開発援助コンサルタントの仕事と同時並行で、ACEの活動も再び始めていた。まだACEの事務所はなく、携帯で連絡を取りカフェなどでミーティングを重ねながらACEの基礎を作り、2002年日本開催のワールドカップにあわせた児童労働反対キャンペーンを徹夜で準備をしたり、仕事の有給をとって小学校で講演を行ったりという日々を送っていた。ただ、「コンサルタントの仕事で1年の半分日本にはいないこともあったりと、仕事とACEの両立は難しかった」という。活動の問い合わせも増えてきたこともあり、本格的にやろうと2004年に事務所を設立したことを機に白木さんは開発援助コンサルタント会社を辞め、ACEで働くことを決断した。給料、安定の面をみれば設立直後のNGOとコンサルタントでは差はあったが、やりたいことはACEにあったためそこに迷いはなかったようである。
児童労働の現状を伝える国内での活動も重要な「現場」

◆白木さんへの質問!②『NGOで働く醍醐味/難しさは?』◆

醍醐味:『興味がある問題(児童労働)に直接仲間と共に働きかけることができるのはいいことかなと思います。直接的に自分たちが思うことを実行できるのはやりがいがある。それにNGOだからこそ、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、専門的なスキルを持たない人でも参加できる国際協力の機会を提供することができる。』

難しさ:『簡単じゃないですよ。始めるのはいいけど、インパクトのある活動が必要だし、自分で続けていくという覚悟が求められる。組織を維持拡大する労力が必要だし、企業とは違い、利益を生み出せないので、スタッフへの給料だったりの運転資金を生み出すのが難しい。』

将来の夢

「世界から児童労働をなくしたい。子どもたちが悲しい思いをしない世の中になったらいいなと思う。そのために児童労働を専門に動いている組織は少ないと思うので、ACEの活動をしっかりと強化して、組織基盤を作っていきたいというのが短期目標です」。児童労働をしている子どもたちは、親を助けたい、家族を助けたいという家族に対する責任感が強く、働きたくないとはいわない。「子どもには教育を受ける権利、働かなくてもいい権利というものがあるということを伝え、子どもや家族に選択肢を持ってもらうことが仕事だと思っている」と白木さんは語る。
プロジェクトを行うガーナのクワベナ・アクワ村で

◆白木さんへの質問!③『国際協力を目指す若者へのメッセージ』◆

『自分は児童労働という問題に対して自分に何ができるかということを意識しながら、地道に突き進んできた。貧しい人でも、力がなくても、世の中を変えることはできる。まずは興味あることを好きなように突き詰めればいいのかなと思います。それが必ずしも国際協力に関わらなくても、何でもいいんですよ。それが何かしら自分の強みになり、将来に生かすことができるはず。国際協力の関わり方はいっぱいあると思うし、海外の現場以外でも、国内でもできる仕事はいっぱいある。でも現場の人たちを見えずにやってしまうの は結果がついてこなくなってしまうので、現場に足を運ぶことは大事なことだと思います。小さい想いを諦めずに繋げていくことが大切だと思います。』

編集者(GLMiインターン:富松愛加)の感想

「興味あることを好きなように突き進めばいい」

私もそう思います。せっかく長い時間を仕事に使うのであれば、何事も真摯に向き合って楽しみながら働きたいものです。でも、それが意外と自分が精神的に弱 い時や周り流されてしまう時に難しくなることがあるような気がします。今回白木さんのお話を聞いて、改めて刺激をもらいました。これから社会人として働く うえで「何に向かっていきたいのか」という目的を明確にしながら突っ走っていきたいと強く感じました。

インタビューアー(早稲田大学:大里宗也)の感想

「社会への問題意識をどう持てばいいのか。」白木さんとのお話を通して、このことを考えるヒントを探し出せないだろうか。そうぼんやりと考えながら、今回のインタビューに臨ませていただきました。

インタビューでは、児童労働への問題意識を持つようになった背景には、白木さんのご自身の幼少期の経験があったというお話をお聞きしました。何も無いところから問題意識は生まれない。そう教わったように思います。

冒頭の問題意識に戻っていうなら、社会への問題意識が生まれるキッカケは、「共感すること」にあるのかな、と思いました。
とにかく緊張しましたが、素晴らしいお話が聴けて良かったです。ありがとうございました。

◆質問などがありましたら…

 

活動プロジェクト GLMiの活動内容についてはこちら。

イベントや支援方法についてはこちら

facebook イベントや現地の様子はこちら。

現地スタッフによるブログ配信中!